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江戸時代の天才たち「天地明察」に学ぶ知識と感動(「天地明察」レビュー)

天地明察 読書レビュー


冲方丁うぶかたとう氏による時代小説「天地明察」。

第31回吉川英治文学新人賞、2010年本屋大賞受賞作で、第143回直木三十五賞候補作でもある傑作です。

感動の連続で、涙ぐんでしまうシーンが数えきれないほどありました。


冗談抜きに、30回は鳥肌が立ったと思います・・・。



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『天地明察』の特徴

天地明察 レビュー

この本の特徴

  1. 歴史と科学が融合した魅力的なストーリー:
    舞台は江戸、四代将軍家綱の御代。徳川家による太平の世の情勢が随所から感じられる。

    主人公の渋川春海(安井算哲)は、江戸時代の天文学者であり囲碁棋士でもあった。

    日本独自の太陰暦を作り上げるという革命的な一大プロジェクトを命じられた春海。
    本作では当時の天文学の発展についても詳細に描かれ、”歴史×科学(天文学)”というストーリー性に惹かれます。

  2. 感動的な人間ドラマ:
    春海は囲碁棋士としての自分に”飽き”を感じつつも、亡き父から受け継いだ二世・安井算哲としての役目を果たさんとする葛藤の心や、新しい暦を作り上げるまでの挫折に打ちひしがれる心情が色濃く描かれています。

    また、プロジェクトを通じて多くの友人や師との深い絆、叱咤激励の数々、彼らとの出会いや別れに心が震えます。

  3. 詳細な歴史描写
    本作では、江戸時代の文化や政治情勢などが緻密に描かれています。
    作者は詳細な歴史考証を行い、当時の時代背景をリアルに描写していることで、物語の中に引き込まれその時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。

  4. 生涯をかけた男の勝負:
    本作では春海を中心に、様々な視点・分野で常に”勝負”が描かれています。

    囲碁の家元四家のうちの一つ・本因坊家との碁所ごどころの地位を巡る勝負。
    算術の天才・関孝和と、その才能に魅せられ勝負を挑む春海の勝負。
    日本の新しい暦を打ち立てんとする春海と天との勝負。
    改暦を促す春海と、それを妬む反体勢力との勝負。
    権力を掌握したい江戸幕府と朝廷の勝負。

    常に葛藤する心や拮抗する勢力の間で揉まれ、純朴な若者から洗練された学者へと成長する春海の姿が見て取れます。


『天地明察』の要約

この本の要約

主人公の渋川春海は、囲碁の家元四家のうちの一つ・安井家に生まれ、幼少期から数学や天文学に興味を持っていた。

彼の家庭は囲碁を通じて多くの学問に触れる環境にあり、彼自身も囲碁の腕前を磨く一方で、算術や天文学の知識を深めていく。

春海が囲碁棋士・安井算哲としての自分に”飽き”を感じながらも、その律儀な性格が故に使命を全うせんと葛藤している中、四代将軍家綱のもと、ある国家一大プロジェクトが立ちあがる。

即ち、日本独自の暦を作り上げること。
歴史的偉業を成し遂げるため、春海の生涯をかけた”勝負”が始まるー。


『天地明察』の感想

本作ではこれまでの武士が世を治める時代から、武力に頼らず民政へと移行する時代の移り変わりが冒頭から緻密に描かれています。

そんな中、日本の文化・宗教・政治・経済に革命的な変化をもたらす改暦のプロジェクトと、囲碁棋士としての春海が天文学者として天に挑むというこの変革が融合する激動のストーリー展開に、気づくとあっという間に引き込まれていきます。

春海の謙虚で不器用な人柄に惹かれ、春海を支えようとする家族や友人、師との出会い。
叱咤激励を受けながら、例え何年かかろうともその思いに応えようとする春海の実直で熱い思い。

これらに心が打たれ感動するシーンがあまりにも多すぎます。。

改暦の影響力や、今の暦が成り立っている背景など、私は知らないどころか意識したことすらなかったため学びはもちろん沢山ありました。

が、この作品を一言で表わすなら、やはり”感動”と私なら答えます。

また、春海の心が震えるシーンや春海の中で革命的な出会いやひらめきが生まれる瞬間が、”からん、ころん。”という音で表現されていて(←もちろん私なりの解釈ですが)、こういう時、擬音語の多い日本語話者に生まれて良かったと心の底から思います。

(この”からん、ころん。”が何の音であるかは、是非作品を読んでください!笑)

頭のてっぺんからつま先まで全身が粟立つあの感覚が忘れられません。



『天地明察』を読んだ人のレビュー

レビュー



『天地明察』はどんな人におすすめ?

こんな人におすすめ

  • 歴史小説が好きな人。江戸時代を舞台にした物語であり、当時の文化や情勢の変遷が詳細に描かれています。

  • 科学や天文学に興味がある人。主人公たちが天体観測や暦作成に取り組む姿が描かれており、科学や天文学の興味を持つ人にとっては、非常に興味深いテーマです。

  • 人間ドラマが好きな人。主人公のひたむきな心、挫折、成功、出会い、別れ、といった人間ドラマが描かれており、感動的なストーリーを楽しみたい人にぴったりです。


『天地明察』:まとめ

歴史小説を普段あまり読まない人・食わず嫌いをしている人にも是非読んでほしい作品です。


”歴史×科学(天文学)”というストーリもあまり見ないジャンルなので、歴史小説をメインに読んでいて新しいジャンルを発掘したい方にも新鮮味が強いと思います。


岡田准一主演で映画化もされているので今度そちらも観てみようと思います。


是非一読することを強くお勧めします!

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